Hamaguri Ryoko-Soloris Works

ソロ活動のリス改め「はまぐり涼子」、絵を描く。

はまぐり映画日記15 「ラッカは静かに虐殺されている」30, May, 2018

非常にハードなドキュメンタリーです。

まずシリアの状況が非常に遠く感じられる人が圧倒的に多い日本では

なかなか観る人も少ないかと思いますが、私が行った日は

レディースデイということもあって割りと人が入っていました。

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2010年末に起こったチュニジアでの抗議運動から

アラブの春が始まり、独裁政権への反対運動がシリアでも起こりました。

シリア政府、それに抗議する反体制派、

その争いに紛れ込み内乱を更に複雑化させている

ISなどのイスラーム過激派の存在があるために、

いまや日本人の理解を超えた混乱状況です。

そんな中で、ISがシリア北部のラッカを制圧し、

街は荒らされ、公開処刑が続くとんでもない状況に

人々は追いこまれてしまいます。

名もなき市井の人々が家族を拘束され、拷問され、処刑されるという

事態に直面していたにもかかわらず

そんな状況は世界で報道されることもほぼなく、

たまに流れるのは大きな攻撃のニュースばかりでした。

 

そんな中、普通の市民である人々が秘密裡に

結成したのが「ラッカは静かに虐殺されている

(Raqqa is Being Slaughtered Silently)という集団です。

そんな彼らを追ったドキュメンタリーがこの映画なのですが(前置きながい!)

観る人は彼らの勇気に敬服する気持ちが起こると同時に、

無力感と恐怖と、彼ら市民記者が抱える見えない未来への不安も

感じるかもしれません。

私は、そうでした。全然頭がまとまらないままです。

彼らはシリアを脱出し、トルコに潜伏し、

ドイツへ逃げ、場所を転々と変えながら、

決死の覚悟でラッカの現状を伝える現地の記者たちと

連絡を取り、慎重に情報を発信していきます。

そんな国外の彼らにもISの手は忍び寄り、

彼らを脅迫し、報復の警告をし続けるのです。

RBSSの彼らも、自分たちが殺されるかもしれないことを

毎日覚悟して生きている。

そんな状況、私だったら耐えきれません。

 

すでにぼろぼろの彼らの精神を支えるものは何なのでしょう。

あるジャーナリストは、彼らの立場になって考えてみましょう、という。

けれど、それはあまりにも難しい話です。

ただ、私は耐えきれないだろうという想像だけは出来ます。

家族を、友人を次々と殺されたら、彼らを突き動かす原動力は

憎しみなのでしょうか。

真実を伝える、という誇りなのでしょうか。

 

子供が生まれ、その小さい手を握る一人の記者も

もう自分が二年後には生きていないかもしれないという。

私たち日本人が普通に今暮らしている状況では

想像を全く越えた話です。

 

宗教を悪用して正義を振りかざし粛清していくような

全く分かり合えない相手に対して、

自分はどういう行動をするのか。

ISに武器ではなく情報発信で立ち向かう彼らの姿を見ながら、

私は同じことができるという自信もなく正直途方にくれました。

 

この映画上映があった5月の始め、数年前に東京で開催された

小さなシリア映画祭でお会いした方がトークショーに出られました。

認定NPO「国境なき子供たち」で、ヨルダンにおける

シリア難民の子供たちの教育支援を行う松永晴子さん。

ヨルダンにおけるシリア難民支援 | 国境なき子どもたち

彼女とつい先日Facebookでこの映画についてやりとりをしました。

ジャーナリスト堀潤さんと彼女がお話した内容は

横浜シネマリンのウェブサイトで動画が公開中です。

期限があるかもしれませんがご興味あれば観てみてください。

ラッカは静かに虐殺されている | 横浜シネマリン

ついでに彼女の活動がわかる最新記事はこちら。

(自分が発言したままの記事にはなっていないと仰っていましたが最新のため)

「国境なき子どもたち」松永晴子さんか見たシリアの惨状 | 女性自身[光文社女性週刊誌]

 

戦火の中、誰かを失くして家族と逃げてきた多くの子供たち。

シリアのすぐ隣でそんな子供たちの教育支援をしている

松永さんの視点もとても大事な視点だと思いました。

RBSSの勇気ある行動を追うドキュメンタリーに対して

あまりに失うものが多い中、どこまで彼らは続けるのか、、、

そんな言葉を吐露した彼女は、映画を全否定してしまったなんて

仰っていましたが、私はそんな風には思いませんでした。

それくらい、色んな感情がこみあげてくる映画であると思います。

こういうものは、「めんどくさい」「いちいち関わっていられない」

そう思っている人も多いでしょう。

私だって、映画は観たけれど何か具体的なことができるかと

言われると正直なにも思いつきません。

けれど松永さんの活動はもっと頭に入ってくるし、

もっと身近に引き寄せられるし、こどもたちの間接的支援という形なら

何かできることがあるのかなと考えられるような気がしました。

どうぞご興味ある方は彼女のブログも面白いので

読んで見てください。文章が、いいです。

鯨を推しはかる気分研究所

 

はまぐり映画日記14 ドキュメンタリー「ヴァーサス:ケン・ローチの人生と映画」27, May, 2018

またしても書き殴り備忘録ですが、面白いドキュメンタリーだったので

ブログにも残しておきます。

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見た目は穏やかな紳士だけれど、作り出す映画は社会の弱き人々を

見つめ、国や政治の在り方を問うような作品ばかり。

81歳のケン・ローチが歩んできた映画人生を振り返る内容です。

これを観た上でケン・ローチ作品を観るか、

何か一つでも作品を観てからこのドキュメンタリーを観るか。

悩むところです。(笑)

労働階級と貴族階級の格差の歴史を歩んできたイギリス社会で

1960年代に初めて労働階級による労働階級の人々を描いた作品を

BBCで撮ったローチ監督は、多くの批判にあい、一時期は全く評価されず、

映画を作れない不遇の時も経験しています。

「人々の暮らしを描くとき、政治は不可欠な要素だ」と言います。

描き方はまちまちだが、どんな場合であれ、その背景に政治は存在する。

イギリスには嫌われ、フランスでは大賞を受けるほど尊敬される監督。

沢山の対照的な印象や意見や評価に包まれたケン・ローチを通して

人間そのものの抱える多様な側面を見るかのようなドキュメンタリーでした。

こういう作品や人に興味がない人は、

びっくりするほど全く関知せず通り過ぎます。

危険分子として疎ましがられても

映画を通して社会の在り方を問いつづけるこの監督の

一本筋の通った生き方には、ちょっとぐっと来るものがありました。

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はまぐり映画日記13 「恋するシェフの最強レシピ」9, May, 2018

たまたま水曜日のレディースデーで何か面白い映画ないかな~と

ググっていたら出会ったこの映画。

金城武はカッコイイとは思っていたけれど、なんか今回の金城さん

ちょっと渋みが出ておるではないか!

思わず頑張って観に行ってしまいました、年甲斐もなく。。

最近、こういう軽めで可愛くてラブリーな映画観てなかったので

単純に楽しかったです!(笑)

ホテルを買収しにきた美食家の社長が、若い女性シェフの料理に胃袋を掴まれ、

そのうちハートを打ち抜かれてドタバタな感じの軽いロマコメ。

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日本語タイトルがこっぱずかしいけれど、

今年45歳、俳優金城武の眼福ぶりたるや、いやはや。

若い頃より中年の今が断然かっこいいぞ、この人!

ストイックで変人で孤高の敏腕社長という

二枚目の三枚目設定も大変お似合いでした。

ヒロインのドンユイは美人じゃないけれど

清涼感と可愛らしさにあふれていました。

途中キラッキラなライバル料理人として出てくる

リン・チーリンの方が断然美人ですが、

ドンユイがとにかくチャーミングで

応援したくなる雰囲気を醸し出しまくっております。

コメディですし、香港中国映画特有の突っ込みたくなる

面白さ満載なんですけど、よくできてますよ、ロマコメとして!

わたしゃ嫌いじゃない、いやむしろ好きだ!

と、金城衝撃波にまんまと撃ち抜かれた中年の偏った感想でごめんなさい。

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はまぐり映画日記12 「ザ・スクエア 思いやりの聖域」15, May, 2018

頭の片隅で気になっていた映画です。

人間の理想と現実。独特な物語の運びと、ユーモアと、不気味さ。

メインの話の流れも面白いですが、脇を支える場面場面に

人間の身勝手な行動や、集団で動く時の怖さが

散りばめられています。

イケメン北欧人のプライドに切り込むアメリカ人女性もなかなか笑えました。

 

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人間は矛盾に満ちていて、不完全。

そんな姿を見せるこの映画は楽しいものじゃないかもしれないけれど

最後の主人公の態度はほんのりやり直せる未来が見えたような気がします。

 

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はまぐり映画日記11 「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」24, May, 2018

実はこれより前に観た映画が二本ほどありますが、

先にアップしてしまいます。

今週シネスイッチ銀座でも一週間の限定上映で明日までやっています。

もしお時間のある方はぜひとも。(しかも明日はレディースデイ)

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オスカー俳優となったゲイリー・オールドマン

そのオーラを消してチャーチルになりきっていました。

このDARKEST HOURで取り上げた1940年の5月は

フランスの地でドイツ軍に追い詰められた30万の兵士の救出

クリストファー・ノーランの「ダンケルクの戦い」が面白いです)の

策を練りながら、ナチスとの和平交渉に動くか否かという

非常に難しい時期でした。

平和な方法を模索した前首相チェンバレンハリファックス卿に対し、

どんな犠牲を払ってでもファシズムには徹底抗戦するという

確固たる意志を貫いたチャーチル

悩みながらも結局は市民の声に自信を取り戻し

閣内の動きを覆すものすごい胆力の持ち主だったのかなと思います。

平和の定義を考え始めるときりがありませんが、

チャーチルという人が求められた時代がよくわかる

面白い映画でした!

そうそう、おまけですが、チャーチルの有名な演説の録音を付けておきます。

映画の前でも後でもこれを聴くと、オールドマンの上手さが良くわかります。

youtu.be

 

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はまぐり映画日記10 「わたしは、ダニエル・ブレイク」May 3, 2018

はい、溜めこんだ映画日記の続きです。

こちらは昨年日本公開した映画で、私の大好きな

ケン・ローチ監督作品。

好きなら速攻観ろよ!と言われそうですが、この映画公開時

私は個展前で真っ青でした。。。思いだした!

この映画の前に既にメガホンを置いて引退を表明していたと

いいますが、この映画をとらずして監督は終われなかった。

そんな思いが感じられる映画でした。

本当にブレない、伝え続ける使命を負った人の映画です。

あ~涙出てきそう。

最近、大変親切な知り合いの方が、ケン・ローチ監督を

追ったドキュメンタリー作品を録画してくれたので

それを観たらまた感想を書きたいと思います。

とりあえず、ケン・ローチの作品を観たことがない方、

社会派ドキュメンタリーがお好きな方、

社会問題に関心のある方は是非ご覧ください。

問題提起をしながらも、素晴らしいドラマになっている作品です。

この自主的映画日記は下書きなしで一気に書いているので

拙い文章、お許しください。

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はまぐり映画日記09 「シェイプ・オブ・ウォーター」Mar. 9, 2018

映画の感想を観てくださっている方々、

最近シネスイッチ銀座上映作品のアップをしておりませんが、

引き続き描かせて頂いてはおります。

現在は、インスタグラムでシネスイッチ銀座さんが

更新してくださっていますのでお手数ですが

@cineswitch_ginza をご覧くださいませ。

原画も館内に展示していただいておりますので、

是非映画館へもお越しください。

さて、個人的に観た映画も時間のあるときに

ぽろぽろ載せていきますが、前回のはまぐり映画日記08は

女神の見えざる手でした。絶対、それ以降観てるはずですが

もう色々どたばたしていた昨年の映画鑑賞記録が

定かではございません。

ので、今年のものから。

といっても、三月の映画です。

しかも、めちゃくちゃピンポイントの感想。

全体の感想ではございませんが、よろしければご覧くださいませ。

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