はまぐり映画絵日記02 『ヒトラーへの285枚の葉書』
ゆっくり感想を書こうかと思っていたのですが、やっぱり
多くの方に早く観ていただきたいなと思うので、下書きせず描いてみました。
とても地味な映画です。けれど、心に響く映画です。
彼ら二人の行動が大きな変化を起こしたかと言えば、
全くもってナチスにとっては大したことではありませんでした。
オットーが動き出したのも、愛する息子が戦死し、
愛する妻が悲しみに暮れるのを見てからでした。
ポストカードに戦争のむごさや、政権の暴走、
メディアの正義を訴える言葉を書き、街のあちこちに置いてまわる
その行為は些細なことかもしれませんが、その当時の彼らにとっては
命がけでした。誰もが逆らうのを避け、静かにしてやりすごす。
むしろ、自ら仲間になって流れに乗ろうとするそんな世の中でした。
何でしょう、この状況の既視感。
どこかの国の起こっていそうな状況です。
現代を生きる私たちに訴えかけるこの作品を
一人でも多くの方が心に留めて考えることができますように。
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シネスイッチ銀座 映画感想絵日記 vol. 57『歓びのトスカーナ』Jul., 8, 2017
シネスイッチ銀座 - 「歓びのトスカーナ」 いよいよ明日8日(土)より公開です!... | Facebook
すでに公開しておりますが、こちらのイタリア映画、
観終わってから考えることが大変多い作品です。
乱暴にまとめると、2人のちょっと情緒不安定な女性の逃避行なんですけど、
2人の過ごす施設、取り巻く人々、その国の懐の深さを感じると同時に、
多様性の尊重の難しさと素晴らしさの両方を感じます。
先に知っておくといいかもしれないと思ったのは、
イタリアには「精神病院」、特に牢屋型治療が35年以上前に廃止されている、
ということです。
参考:
イタリアはいかにして社会を精神病院から解放したのか / 『精神病院はいらない!――イタリア・バザーリア改革を達成させた愛弟子3人の証言』編著者、大熊一夫氏インタビュー | SYNODOS -シノドス-
通りで、この映画の中に出てくる患者たちはだいぶ自由な
生活をしているわけですよ。
ただただ、すごいなぁと思いました。
まあ、少しばかり世の多くの人が自制する境界線を逸脱しちゃってる
ところのある2人とはいえ、その純粋さとか、繊細さとか、
激しさとか、そういうちょっと人よりはみ出ちゃったものも
個性として受け止められる度量のある国民性。
人間らしく扱う治療体制に至るまで長い苦難の歴史があったとはいえ、
こうして日本にはない明るさとユーモアを持って映画にできるセンス。
いいですよね。
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はまぐり映画絵日記01 『Simplife (シンプライフ)小さくて美しい暮らしをさがしにいくロードムービー』
5月20日に地元鎌倉で観た映画の感想です。
とてもいい映画だったのでできるだけ早く感想を書きたかったのですが、
6月は絵の仕事を支える別のわらじの方で色々とすったもんだがあり、
書くに書けない余裕のない状況でした。
しかし、何かにつけこの映画のことを思い出すことも度々あり、
私にとっての幸せってどういうものだろうと考える時間を
1ヶ月ちょっと貰ったような気がします。
とても、とても、良い映画です。
今後も多くの方が観る機会を得られますように。
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シネスイッチ銀座 映画感想絵日記 vol.56『ありがとう、トニ・エルドマン』Jun 24, 2017
シネスイッチ銀座 - 「ありがとう、トニ・エルドマン」 いよいよ明日24日(土)より公開です!... | Facebook
6月2本目の作品は、ドイツ映画。
ちょっと説明しがたい映画なので、シーンを切り取ってイラストにしました。
お父さんの笑いきれないおふざけと、それを白い目でみる真面目くさった娘。
最後の方で、わたくし大笑いしてしまったシーンがありますので
是非映画館でご体験いただきたい。
ヨーロッパの感覚って面白いなぁと思う瞬間が多い映画です。
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シネスイッチ銀座 映画感想絵日記 vol.55『ザ・ダンサー』Jun 3, 2017
シネスイッチ銀座 - 「ザ・ダンサー」 いよいよ明日3日(土)より公開です... | Facebook
今私たちが当たり前のように受け止めているモダン・ダンスの舞台の
始まりを作ったと言われるひと。
アメリカ大陸からフランスに渡り、自分の踊りとそれを支える
一切のデザインや演出まで行ったロイ・フラーという女性がいたそうです。
そしてその彼女と対極のようなダンサー、イサドラ・ダンカンの存在。
イサドラ役がリリー・ローズ・デップという話題性を抜きにしても
面白い映画だったと思いますが、リリーの存在感はなかなか。
美しい踊りの場面も必見です。
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シネスイッチ銀座 映画感想絵日記 vol.54『オリーブの樹は呼んでいる』May 20, 2017
シネスイッチ銀座 - 「オリーブの樹は呼んでいる」 いよいよ明日20日(土)より公開です!... | Facebook
5月第二弾は、スペイン映画です。
監督はイシアル・ボジャインという女性で、1983年のスペイン映画
ヴィクトル・エリセの『エル・スール』で
15歳の主人公を演じた女優でもあります。
そして、脚本はイギリスの名監督ケン・ローチとタッグを組んで
いくつのも素晴らしい作品を作っているポール・ラヴァーティ。
普段映画の作り手が誰だとかを気にするより、
映画そのものを観て感じることを優先することが多いのですが、
今回はそういう二人によって作られた映画ということを
観る直前に知りました。
最近あるマニアックなスペイン映画が日本でやたらと流行り、
私も一応観てみたものの、いまいちその面白さをつかみきれず
最後まで首をかしげた事がありました。
そのせいかすこし警戒しながら観たワタクシですが、
ボジャインとラヴァーティが描く作品は素直に引き込まれる上質な物語です。
一本のオリーブの樹をめぐる人々の愛憎と人間の身勝手さ、
土地に生き続ける2000年の樹木の力。
本当にありそうな物語の中に、今のスペインが見えてくるようです。
ちなみに、ワタクシはまぐりはスペイン語をかつて専攻しておったのですが、
若者の会話にスラングがあまりに頻繁に出てくるのでちょっと笑ってしまった。
ほんとに「このやろ、ちくしょー、ばかやろー」的様々なスラングを
ばんばん言ってるもんですから。(笑)でも、それがやけにリアルでした。
でもって今週1983年の『エル・スール』をジャック&ベティで観たら、
スペイン語が美しくて丁寧でわかりやすくてホッとしました。
34年も経てば言葉使いってほんとに変わりますねぇ。
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